もともと生活費と教育費は非課税です

 

通常、年間で110万円(基礎控除額)を超える贈与を受けた場合は「贈与税」が課されます。しかし財産の性質や、贈与の目的によっては、金額にかかわらず贈与税がかからないものもあります。

 

父母や祖父母などの扶養義務者から、生活費や教育費のために贈与された財産のうち、通常必要と認められる範囲であれば、贈与税の課税対象にはなりません。そのほか、結婚費用や出産費用の一部も課税対象にはなりません。これらに該当すれば、110万円以上であれ110万円以下であれ金額にかかわらず、また、各種の税制上の特例を受けなくとも、子供や孫に大きなお金をあげられることになります。

 

■扶養義務者とは

 

①配偶者(夫や妻)

②直系血族(父母、祖父母、子、孫)

③兄弟姉妹

④三親等内の親族で生計を一にする者

 

従いまして、夫婦間、親子間、兄弟間の生活費や教育費などの贈与は、要件を満たせば非課税となります。親の介護費用、医療費、生活費を子供が負担することも、必要と認められるものであれば贈与税はかかりません。

 

■非課税になる生活費・教育費などの範囲

①非課税になる生活費

 

「生活費」は、通常の生活をするのに必要な費用をいいます。また、治療費や養育費その他これらに準ずるものを含みます。

 

具体的には、以下のような贈与が「生活費」として「通常必要と認められる範囲内」であれば非課税とされています。

・子供の生活費の仕送り

・一人暮らしをしている子供の家賃

・結婚資金(新婚後の家具・家電の購入費や結婚式・披露宴の費用に充てている場合)

・出産費用(出産のための検査費用、入院費用、治療費用、不妊治療の費用、ベビー用品代など)

 

②非課税になる教育費

 

 

「教育費」は、教育を受けさせるための学資、教材費、文具費等をいい、義務教育費に限られません。そのほか通学のための交通費、学級日、修学旅行参加費、海外留学のための学校費用や渡航費も、「通常必要と認められる範囲内」であれば非課税となります。

 

③ポイントは「必要な都度、必要なだけ」

 

 

重要なのはタイミングと金額です。上記の各費用を、「必要な都度、必要なだけ」渡すことが大切です。例えば分割払いの3年間の学費であれば、3年分を受贈者に一括で渡すのではなく、学校への支払いが必要なタイミングで、必要な分を贈与者から直接学校へ支払うといいでしょう。

 

逆に数年間分の生活費や教育費を「必要な都度」ではなく、「一括して」贈与を受けた場合、生活費、教育費として使わなかった分が預貯金として残っている場合や株式や不動産の購入資金に充てられた場合などは、この生活費、教育費に充てられなかった部分について贈与税の課税対象とされてしまいます。

 

④扶養義務者以外からの贈与

 

 

扶養義務者以外の親族や他人からの贈与でも、お祝儀や弔慰金、入学祝、結婚祝い、出産祝いなども社会常識の範囲内であれば非課税と考えられています。

 

■「通常必要と認められる範囲」とは

 

上記の「生活費」や「教育費」に該当したとしても、その金額が「通常必要と認められる範囲」を超える場合は、言い換えると金額が多すぎる場合には、贈与税として課税されることになります。

 

「多すぎる」というのも抽象的ではありますが、あげる側と受け取る側の財産や収入の状況、バランスで判断されます。お子様側で裕福といえるほど財産、収入があるのに、生活費をご両親から受け取っていたとしたらやはり不自然と言われるかもしれません。

 

例えば子供の賃貸住宅の家賃を親が出してあげる場合には、子供の収入によって取り扱いが変わるでしょう。子供が学生であったり、社会人になりたてであったり、収入が少ない場合には、親が子供の賃貸住宅の家賃を負担してあげても問題にはなりません。

 

一方、子供がサラリーマンで十分な収入がある場合、親が子供の家賃をを負担すると贈与税の課税対象と認定される可能性が高くなります。