負担付き贈与に気を付けましょう

■負担付き贈与ってなに??

 

・住宅ローンの残債もセットで住宅を贈与する場合は要注意です!

・敷金付きでアパートや賃貸マンションを贈与する場合は要注意です!

 

みなさん、『負担付贈与』という言葉をご存知でしょうか。


『通常の贈与』は、単純に、あげる人から無条件で財産をもらえる行為であるのに対して、『負担付贈与』は、もらう人が一定の債務負担を条件とする贈与となります。


イメージはつきますか?

分かりやすくするために、例を挙げてみましょう。


例えば、親が住宅ローンで建てた家を、ローンの返済途中で子供に贈与する場合に、この住宅ローンもセットで贈与するというケースです。住宅ローンの残額の今後の返済は子供が負担していくことになります。


この贈与を行うことで、子供は住宅の所有者&ローンの返済義務者になり、

親は返済義務を免れることになります。


このように、もらう側の人が一部負担を引き継ぐ贈与であり、

あげる側の人は贈与後に従来負っていた債務を免れる結果になるという特殊な贈与となります。

 

■負担付き贈与は税金が多くなる(もらった人もあげた人も税金がかかる!)

 

何気なく実行してしまいそうな負担付き贈与ですが、実は、もらった側にとっては通常の贈与よりも大きな贈与税がかかってしまい、また、あげる側にとっても思ってもいなかった所得税がかかるケースもあるということで、税金上はダブルパンチの負担になる可能性があるので要注意です。

 

・受贈者への課税(もらった人)

 

もらった人には贈与税が発生する可能性があります。

具体的には、贈与された財産から引き継いだ負担額(債務額)を差し引いた金額に対して贈与税がかかります。住宅のローン負担の場合には、贈与された住宅の評価額からローンの残債額を引いた金額が贈与されたとみなされ、その金額に対して贈与税が計算されます。

 

ここでのポイントは、負担付き贈与の場合、贈与財産が不動産の場合は、「時価」で評価しなければいけないということです。

 

不動産を「負担付き」でない形で贈与した場合の評価は「相続税評価」で行います。「時価」は「相続税評価」は1.25倍~2倍になることが多いため、負担付き贈与にすると、贈与財産が高く評価されることになります。結果として、多額の贈与税の支払い義務が生じていたという事態になってしまいます。

 

・贈与者への課税(あげた人)

 

あげた人には所得税・住民税が発生する可能性があります。

こちらは贈与した財産を、ローンの残債額と同額で売却したとみなされます。ローンをもう返済しなくていいという(債務が免除されるという)経済的利益からその儲けに対して課税されることになります。

 

ですので、例えば住宅の場合は、「ローンの残債額>住宅の取得費」の場合には、その差額を売却の利益とみなして、所得税が課税されます。

 

■負担付き贈与としての課税を回避する方法もあるんです

 

このように、もらった側にもあげた側にも大きく課税されてしまう可能性のある「負担付き贈与」ですが、実はこの課税を免れる方法もあるのです。


敷金がある賃貸アパート(建物)の贈与で、預かっていた敷金に相当する現金も同時に受贈者に贈与する場合は、国税庁より「負担付贈与に該当せず」という見解が出されています。この場合には、贈与財産の評価は「時価」でなく「相続税評価」でよいとされ、あげた側の所得税・住民税もかからないとされています。

 

もしこの債務相当額の現金も同時に贈与することが可能であれば、選択肢としてご検討ください。

 

■負担付き贈与を実行するときの注意点

 

ここまでの説明でお気づきかもしれませんが、「負担付き贈与」は節税対策としては有効ではありません。気づかずに負担付き贈与を実行していたなんていう事態がないように気を付けましょう。意図的に実行される場合にも、事前にどれくらい税金が発生するかをしっかり把握しておきましょう。

 

また、負担付き贈与を行うためには通常の贈与契約書と異なる書式となりますので、以下ご参照ください。

 

■負担付き贈与契約書のひな形

 

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負担付贈与契約書

 

贈与者○○○○(以下、「甲」という。)と受贈者○○○○(以下、「乙」という。)は、次の通り贈与契約を締結した。

 

第1条 甲はその所有する末尾目録記載の土地・建物(以下、本件不動産という)を乙に贈与し、乙はこれを受諾した。

 

第2条 甲は乙に対し、本件不動産を、平成○○年○月○日までに引き渡し、かつ、その所有権移転登記手続を行う。
2 前項の所有権移転登記手続に伴う一切の費用は乙の負担とする。

 

第3条 本件不動産に課税される公租公課については、本件不動産の所有権移転登記手続完了時を基準とし、その日までは甲、その翌日以降は乙の負担とする。

 

第4条 乙は、本件不動産の贈与を受けた負担として、甲に対し、○○○○○○○○を支払わなければならない。

 

第5条 乙が前条の義務を履行しなくなったときは、甲は本契約を解除することができる。
2 前項により、本契約が解除された場合は、乙は、直ちに本件不動産を甲に引き渡し、かつ、所有権移転登記手続をしなければならない。

 

 本契約を証するため、本契約書を作成し、各自署名押印する。

 

平成  年  月  日

 

              贈与者(甲)
                住所

                氏名                 印

 

              受贈者(乙)
                住所

                氏名                 印

 

物件目録

 

(土 地)
 所 在   ○○市○○区○○町○○丁目
 地 番   ○○番○○
 地 目   
 地 積   ○○㎡

 

(建 物)
 所 在   ○○市○○区○○町○○丁目○○番地
 家屋番号  ○○番○○
 種 類   
 構 造
 床面積   1階 ○○㎡、2階 ○○㎡

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負担付き贈与契約書のひな形
負担付贈与契約書.docx
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