死因贈与と遺言の違い(契約書ひな形もあります)

死因贈与とは?

 

死因贈与とは、「贈与者(あげる側)と受贈者(受け取る側)が契約を締結し、贈与者が死亡した時点で、事前に指定した財産を贈与者から受贈者へ引き継ぐ」というものです。

 

例:「私が死んだら、自宅の土地・建物を長男に贈与します」

 

生前贈与は読んで字のごとく、「生前」に契約によって贈与を行うことですが、「死因贈与」は生前に結んだ契約に基づいて、死亡をきっかけとして贈与が実行されますので、贈与を行うタイミングにおいて両者は正反対のものになります。

 

死因贈与契約書のひな形はこちら↓

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死因贈与契約書

 

 

贈与者 鈴木太郎 を甲とし、受贈者 鈴木小太郎 を乙として、甲乙間において次の通り死因贈与契約を締結した。

 

第1条  甲は現金 〇〇〇〇 円及び以下に記載の土地(以下「本件土地」という)を乙に贈与することを約し、乙はこれを承諾した。

 

 所在: 〇〇市〇〇区〇〇町〇丁目

 地番: 〇〇番〇〇

 地目:

 地積: 〇〇.〇〇㎡

 

第2条  前条の贈与は、甲が死亡したとき効力を生じ、かつこれと同時に贈与財産の所有権は当然に乙に移転する。

 

第3条  甲及び乙は、本件土地について乙のため所有権移転請求権保全の仮登記手続を行うものとする。甲は、乙が上記仮登記申請手続をすることを承諾した。

 

第4条  甲は、下記の者を執行者に指定する。

 住所    〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号

 氏名    〇〇 〇〇

 生年月日  昭和〇〇年〇〇月〇〇日

 

上記契約を証するため本証書を作成し、各自署名押印する。

 

平成  年  月  日

 

            贈与者(甲)

               住所 ___________________________

               氏名 ______________________ 印

 

            受贈者(乙)

               住所 ___________________________

               氏名 ______________________ 印

 

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死因贈与契約書ひな形.docx
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負担付死因贈与

 

また、「死因贈与」の一つの形態として、「負担付死因贈与」というものがあります。これは受贈者が「義務」や「負担」を果たすことを条件として、死亡後に財産を渡すというものです。この「義務」や「負担」として、贈与者の身の回りの世話などを指定することが一般的です。

 

例:「生存中に世話をしてくれたら、自宅の土地・建物を長男に贈与します」

 

負担付死因贈与契約書のひな形はこちら↓

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負担付死因贈与契約書

 

 

贈与者 鈴木太郎 を甲とし、受贈者 鈴木小太郎 を乙として、甲乙間において次の通り死因贈与契約を締結した。

 

第1条  甲は現金 〇〇〇〇 円及び以下に記載の土地(以下「本件土地」という)を乙に贈与することを約し、乙はこれを承諾した。

 

 所在: 〇〇市〇〇区〇〇町〇丁目

 地番: 〇〇番〇〇

 地目:

 地積: 〇〇.〇〇㎡

 

第2条  前条の贈与は、甲が死亡したとき効力を生じ、かつこれと同時に贈与財産の所有権は当然に乙に移転する。

 

第3条  甲及び乙は、本件土地について乙のため所有権移転請求権保全の仮登記手続を行うものとする。甲は、乙が上記仮登記申請手続をすることを承諾した。

 

第4条  乙は、本件贈与を受ける負担として、〇〇〇〇をしなければならない。

 

第5条  甲は、下記の者を執行者に指定する。

 住所    〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号

 氏名    〇〇 〇〇

 生年月日  昭和〇〇年〇〇月〇〇日

 

上記契約を証するため本証書を作成し、各自署名押印する。

 

平成  年  月  日

 

            贈与者(甲)

               住所 ___________________________

               氏名 ______________________ 印

 

            受贈者(乙)

               住所 ___________________________

               氏名 ______________________ 印

 

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なお、「死因贈与」に似ている制度として「遺贈」(=遺言によって死亡後に財産をわたすこと)があります。このページでは両者の共通点とメリット・デメリットをご説明します。

 

死因贈与と遺贈の共通点とは?

 

死因贈与と遺贈は、契約や遺言によって、自分の死亡後の財産の渡し方を決めることができます。どちらも財産を渡す側の人の死亡によって効力が発生する点が共通しています。

 

死因贈与には「贈与」という言葉が入っていますが、死亡によって財産が移りますので、遺贈と同じように財産を受け取る方に相続税が課せられます。

 

もう一つの共通点としては、死因贈与と遺贈のいずれもが、法定相続人はもちろん、法定相続人以外の人に対しても相続財産を承継させることが可能です。

 

死因贈与と遺贈(遺言)の一番の違いとは?

 

死因贈与と遺贈とで、上記の通りいくつかの共通点がありましたが、「遺贈」は、遺贈者(あげる側)が一方的に行う行為(意思表示)ですが、「死因贈与」は贈与者と受贈者との合意で成立する契約という点が一番の違いです。

 

「遺贈」においては遺言作成時に受遺者(受け取る側)は内容を知りませんので、遺言作成者の死亡後に遺言の内容を知った時点で、財産の受け取りを放棄するという選択が可能です。

 

一方、「死因贈与」においては契約時点で受贈者(受け取る側)が納得のうえで契約していますので、後で財産の受け取りを放棄することはできません。

 

遺贈のメリットとデメリット

遺贈のメリットとは?

 

遺言は形式によっては(「秘密証書遺言」または「自筆証書遺言」の形式で作った場合)、内容を誰にも知らせないで作ることが可能です。

 

※「公正証書遺言」の場合には、公証人と2人以上の証人の立ち合い必要なので、第三者に内容を知られることになります。

 

一旦作った遺言はその後に修正・撤回することができます。

 

また、前述の通り、受遺者側が財産の受け取りを放棄することが可能となります。

 

遺贈のデメリットとは?

 

遺言の記載事項などの内容、書き方に不備があった場合には、遺言が全体として無効となる可能性があるので注意が必要です。

 

死因贈与のメリットとデメリット

死因贈与のメリットとは?

 

遺贈における遺言書と異なり、必ずしも死因贈与に関する「契約書」の記載事項に法的な要件・形式は求められていません。さらに言えば死因贈与契約は口頭でも成立します。

 

※それでもトラブル防止のため、死因贈与に関する「契約書」を作っておくことをおススメします。

 

また「死因贈与契約」は贈与者と受贈者の合意により成立していますので、原則は受贈者側による放棄が認められていません。ですので贈与者の指定した受贈者に確実に財産をお渡しすることが可能となります。

 

死因贈与のデメリットとは?

 

通常の死因贈与契約の場合には、生前に贈与者のみの意思で契約の撤回が可能ですが、「負担付死因贈与」の場合には、受贈者側が、贈与者の身の回りの世話などの「義務」や「負担」を既に履行していたとすると、契約を贈与者側の意思のみで撤回することは原則できません。

 

なお、不動産の贈与・移転を伴う場合には、死因贈与のほうが遺贈よりも登録免許税や不動産取得税が高くなる可能性があります。登録免許税・不動産取得税は、移転する不動産の固定資産税評価額をベースとして以下の通り計算します。

 

<相続人に対する遺贈の場合>

登録免許税・・・固定資産税評価額×0.4%

不動産取得税・・・なし

 

<相続人以外に対する遺贈の場合>

登録免許税・・・固定資産税評価額×2%

不動産取得税・・・固定資産税評価額×4%

 

<死因贈与の場合>

登録免許税・・・固定資産税評価額×2%

不動産取得税・・・固定資産税評価額×4%

 

まとめ

 

死因贈与と遺贈(遺言)では、共通点がある一方でそれぞれメリットデメリットがありますので、想定される財産の分け方に合わせて最適な方法をご活用ください。いずれも法的な側面に注意する必要がありますので、ご検討の際には専門家に相談されることをおススメします。